ハンカチノキのあれこれ
ハンカチノキのあれこれ
ハンカチノキ
中国南西部の標高2,000m付近の山地が原産の落葉樹木。花びらがなく、大小2枚の白い苞(ほう)をハンカチに見立て「ハンカチノキ」と名付けられました。また別名は「鳩の木」「幽霊の木」です。
開花期は4月下旬~5月上旬で、花には独特の香りがあります。
ハンカチノキは芽吹きの段階ですでに「葉」「苞」「中心の花」の形に展開します。いわゆる「つぼみ」という状態がなく、いきなり花が出てきます。ところがこの段階ではまだ苞は緑色をしているので、若葉との違いがあまりありません。
芽が開き始めてから約10日かけて、苞が大きくなり色も『緑→クリーム色→白』と変化します。白くなり風にひらひらと揺れるようになるとハンカチらしく見えてきます。ハンカチとはいうものの、手触りは保湿ティッシュのような感じ。このハンカチ部分は大小2枚の苞でできています。
花は、(A)雄しべだけの雄花、(B)両性花(雄しべと雌しべのセット)+雄花、の2種類の花が1本の木につきます。(B)の花はイソギンチャクのような雌しべの先端が目立ちます。例えるなら(A)は男子校、(B)は女子の少ない共学校のような状態です。
苞には、雨風や紫外線から花を保護する役割があります。2枚の苞は左右ではなく、上下に配置されています。開花中の花をよく観察してみましょう。小さい苞が上、大きい苞が下になり、雌しべは雨にあたりたくないのか大きい苞に向いていますね。
そしてもうひとつの役割が、花粉を運ぶ昆虫に花の存在を示すことと考えられます。
苞が白くなるということは、昆虫にみつけてもらいやすくなるということです。ハンカチノキの花は蜜がないので、花粉を食べる昆虫がやってきます。また独特の香りを出し昆虫にアピールします。この香りは100~200m離れていてもわかるほどです。開花期間中「猫のオシッコのにおいがする」といわれてしまうことがありますが、違います。この花のにおいなんです。
花の散り方には2つのパターンがあります。雄花は苞を2枚つけたままの姿でぽとりと落ちます。一方、両性花+雄花は苞が一枚ずつはらりはらりと散っていきます。
受粉された花は結実し秋にはピンポン玉くらいの実がついているのを見ることができます。「種をまいたら芽が出ますか」と質問されますが、発芽率はあまりよくありません。また発芽までに2年かかる種子でもあるので、忘れたころかあきらめたころに芽が出てきます。さらに発芽してから白いハンカチが見られるようになるには10年かかるといわれていますので、気長に待てる人向きの樹木です。待てない人には苗木の頃から開花する園芸品種が出ていますので、そちらがおすすめです。
都市緑化植物園のハンカチノキは2本あり、1週間ほどずれて開花します。そのため、見頃期間が4月下旬~5月上旬の2週間と長く続きます。開花中の不思議な花をぜひ観察してみてください。