木の実の季節
今年は猛暑日が続き長い夏でしたが、いつの間にか涼しい秋風が吹くようになりました。真夏の暑さに耐え、実をつけた植物園の木々を紹介します。
- ザクロ(石榴・柘榴)
ザクロは、ミソハギ科ザクロ属の落葉中高木で、西南アジア原産です。
花木園にあるザクロは赤い実をつけていますが、熟してくると、自然に裂け、中から赤い種子が顔を出してくれます。種子の外皮(外種皮はククエン酸やリンゴ酸を多量に含み、甘酸っぱく、食用として楽しめますが、「咳止め」「下痢止め」などの生薬としても古くから用いられてきました。
ザクロの花ですが、開花期は6~7月頃で、赤い(濃いオレンジ)色の花を咲かせていました。
男性陣の中に、唯一の女性のことを 「紅一点」と言いますが、これは中国の王安石という詩人(政治家でもあったようです)が「一面緑の草むらの中に咲く一輪のザクロ」詠んだ詩から出た言葉からきたと言われています。ザクロの花は新緑の中で鮮やかな赤い色をしているので、王安石を惹きつけたのだと思いますが、深まる秋の中、赤い実もたいへん魅力的です。
ちなみに、ザクロには白い花をつける種類もあり、薬草園には、白い花のザクロが植栽され、白い(黄色がかっています)を実つけています。
- カリン
カリンは、バラ科カリン属の落葉中高木で、中国原産です。
春に淡いピンクの花を咲かせ、秋に黄色い実をつけます。果実は重さ200~500gにもなるのですが、枝はしならず、薬草園にあるカリンも果実をできるだけ落とさないように頑張っています。
落葉しても果実が落ちずにいてくれると、遠目からはレモンが枝に突き刺さっているようなこんなユニークな姿を見せてくれるかもしれません(写真3枚目)。なお、カリンの実は見た目はおいしそうですが、木質で硬い上、酸味、渋みともに強く、そのままでは食べられません。咳どめ効果があり、のど飴や健康飲料の原料に、家庭では果実酒やハチミツ漬けに利用されています。 - ブンタン(文旦)
ブンタンは、ミカン科ミカン属の常緑中高木で、マレー半島~インドネシア原産です。
春に白い花を咲かせ、果実は10月から2月にかけて黄色に熟していきます。
品種により異なりますが、直径15から25センチメートル、重さ500グラムから2キログラムまで様々な大きさに育ち、「柑橘(かんきつ)類中最大の果実」と言われています。
果皮の内側の白いスポンジ状の部分は2cm程度の厚みがあり、これを取り去ると大きさは半分くらいになりますが、この部分はザボン漬けに使うことができます。果肉は果汁が少ないですが、独特の甘みと風味を持ちます。また、マーマレードやボンタンアメに用いられることも有名です。
ちなみに、ブンタンは日本に1688年(元禄元年)から1780年(安永9年)の間に伝来し、広東と長崎を行き来する貿易船が難破して鹿児島に漂着し、船長の謝文旦(ジアブンタン)から救助のお礼としてブンタンを受け取ったことからその船長の名前に由来するという説があります。「ザボン」とも呼ばれ、これはポルトガル語名のzamboaに由来します。名前が違っても、これらは同じ植物を指しています。
この他にも、ハンカチノキ、カラタチ、アオハダ、ギンバイカなど、園内ではいろいろな木の実を発見できます。秋が深まる中、是非、園内散策をお楽しみください。