ニホンザルのたて社会
齊藤飼育係
2021年3月31日
大宮公園小動物園には10頭のニホンザルが暮らしています。いたずらっ子やマイペースさん、甘え上手、おこりんぼうなど個性豊かなメンバーで毎日さまざまなドラマが繰り広げられています。この動物園では他にも4種のサルを飼育していますが、来園者の観察時間が最も長いのは他でもないニホンザルです。
たくさんの動物園で飼育されていて国内では野生でも観察することができる。決して珍しくはない種であるにもかかわらず、みていて飽きないのはなぜでしょうか。
ニホンザル舎の前で一番多く聞こえてくる声といえば、「ボスザルはどれだろう?」です。たしかに、私たちは“サル山にはボスザルがいて、群れを守り支配している”という知識を知らず知らずのうちに植え付けられてきましたよね。一番大きくてどっしり構えているオス。当園では現在サスケがその役割を担っています。そして、それ以外のメンバーもしっかり順位が決まっていてその空間の中では完全に縦社会がつくられています。
では、野生の群れではどうでしょうか。最近の研究によると野生のニホンザルの群れにはボスザルは存在せず、群れの中の優劣もかなりルーズなのではないか。といわれています。食べ物やすみかなどの資源が豊かな野生下では群れと群れ、そして群れのメンバー同士のあらそいがあまり起こらないようです。仲裁や他の群れとのあらそいのために最前線に出るリーダーは必要なく、サル同士の優劣も必要ないと考えられています。
ニホンザルの群れにはボスザルがいる。と認識してきた私たちにとってはやや衝撃です。
一方で、限られた空間の中で決められた時間に決められた量の食べ物を与えられて生活している動物園のニホンザルたちには、やはりサル同士の優劣がありボスザルもいます。この動物園で暮らしている10頭をよーくみているとお互い気を遣ったりみんなチラチラ他のサルの行動をみながら自分の立ち振る舞いを考えて動いているのがわかります。
優劣のない野生の群れはたしかに平和で素敵ですが、毛繕いでリラックス〜の時間だけではなく、時には怒られたり媚を売ったり、順位がある縦社会だからこそ、私たち人間もニホンザルの群れをみていて飽きないのかもしれません。
展示場の前に、紹介看板をつくりました。観察の時に活用してもらえると嬉しいです。