マイクロチップって知っていますか?(その1)
天野獣医
2021年6月15日
みなさんは「マイクロチップ」って知っていますか?最近時々聞くようになった言葉ですね。ご存じの方も多いと思います。しかし、実際に日常生活でなじみのあるものでもないので、見たことがあるという方は少ないと思います。この「マイクロチップ」、20年ほど前まではほとんど耳にすることはなかったように思いますが、今や日本だけでなく世界中の生物業界で重宝されているシロモノです。マイクロチップとはその動物がどこの誰であるかを特定できる標識のようなものです。長さは1cmほど、直径(太さ)は2mm程度で、見た目は小さなカプセルのようです。それを動物の場合は主に背中の皮下に、鳥類の場合は胸の筋肉の中に、専用の注射器を使って埋め込みます。こう聞くとぎょっとする方も多いと思います。見た目は針が太くて「痛そうだなぁ」と思われるでしょう。でも実際は通常の注射を受けるのとほぼ変わらないのだそうです。やっぱりちょっとは痛いですよね。注射ですから…。ただマイクロチップを挿入するためだけに麻酔をかけたりする必要はありません。
ではマイクロチップを装着する利点はなんでしょう。それは、先述した通りその動物がどこの誰であるかを証明できることです。他の方法としては首輪や足環や耳標などいろいろあり、これらは離れたところから見て認識できる利点があります。しかし、抜け落ちてしまったり、ちぎれたり、老朽化によって外れてしまう可能性があるのです。一方マイクロチップは基本的には半永久的に使えます。マイクロチップを読み取る特殊な機械をかざすと世界に一つだけしかない15桁の番号が表示され、その個体である、ということが証明されます。一般的には家庭で飼われている犬や猫が迷子になった時や盗難にあったときなどにマイクロチップを装着してあれば、それを読み取ることによって無事に飼い主のもとへ戻ることができ、誤って別の人に引き取られたり、飼い主不明で殺処分されたりする動物が減るということです。こういった利点からすべての飼い犬、飼い猫にマイクロチップを装着することを義務化している国も年々増えてきました。これは簡単にペットを捨てたりしないで責任をもって最後まで飼うことにもつながります。
ただしマイクロチップにも欠点があって、迷い犬などが最初に保護される保健所などに読み取る機械(リ-ダー)がないと証明できないことや、体の外側につける標識と違って遠くから外見を見ただけでは個体が特定できないなど、いくつかあります。まだまだ行政上の整備や多くの人々の認知などが今後必要となってくるでしょう。
さて、そんなマイクロチップ、動物園ではどのように役立てているのでしょうか。
この続きは次回の「その2」をお楽しみに待っていてくださいね。