大宮公園小動物園

マイクロチップって知っていますか?(その2)

天野獣医

2021年7月15日

 前回、マイクロチップとはどのようなものかを説明しました。
 今回はそれを動物園ではどのように利用しているのかをお話ししたいと思います。

 ペットのイヌやネコの場合は迷子になってしまったり、盗難にあったり、または災害で離ればなれになった場合の迷子札のようにその動物と飼い主を結びつける役割が強いマイクロチップ。同じように日本国内の動物園でも悪意ある人によって盗難にあった動物が、マイクロチップのおかげで間違いなくその動物園の個体であることがわかり、無事に戻ることができたという事件もありました。

 このような事件の時は迷子札としての役割も大きいのですが、動物園では他にもマイクロチップが果たす重要な役割があります。
 動物園では多くの動物を飼育し、管理しています。動物園にはヤギ、ブタなどの家畜もいますが、大半は野生動物です。家畜のテンジクネズミ(モルモット)のように種類によっては一頭一頭模様が違うものもいるので、外見だけで個体識別ができる動物もいますが、ほとんどの野生動物はどの個体も見た目は同じ。相当慣れている人でなければ見分けがつかない場合が多いと思います。

 そんな時に役に立つのがマイクロチップです。先述した通り遠くから見て個体を識別はできませんが、捕獲するなどすればどの個体かを確実に知ることができます。また、先ほど慣れている人であれば個体を見分けられる、と書きましたが、たとえば熟練のサル山の担当者などは何十頭もいるサルの顔を見て全頭見分けられる能力を持っている人もいるでしょう。それは尊敬すべきすごいことなのですが、マイクロチップの利点は、今日初めてその動物に係る人でも間違いなく個体を識別できるというところにあるのです。誰でもが一頭一頭を確実に識別できることにより、個体ごとの健康管理のデータもしっかりと残すことができるのです。

リーダー
この機械でマイクロチップを読み取ります
読み取り画面
実際に読み取るとこんな風に表示されます

 また、動物園では人気の高い動物ばかりでなく、世界中で絶滅の危機に瀕している貴重な動物や鳥類、爬虫類などを飼育していて、動物たちがこの地球上からいなくならないように国内外の動物園と協力して繁殖計画を立てて守っていくという使命があります。
 そこで日本や、世界各地の動物園が繁殖計画にそって血縁関係のない雄と雌をお見合いさせるために他の動物園に移動させるのですが、ほとんど外見で見分けがつかない動物の場合でも、マイクロチップがあれば個体を間違えたりすることもありません。
 また鳥類などは見た目では性別や年齢などもわからない種類も多いのですが、マイクロチップを入れておけば、その個体が確実にわかるため、飼育している園館で参照すればいつどこで生まれたものか、雄か雌かなどの個体情報にもつながります。これもマイクロチップの大きな利点です。

 今やこのようにマイクロチップは、動物園で貴重な動物たちを絶滅から守るために欠かせないものになっているのです。私たちを含め全国の動物園スタッフは来園者のみなさんに動物の美しさや強さ、魅力を伝えながら、地球上から絶滅の危機に瀕している動物たちが消えてしまわないようマイクロチップを一つの手段として活用しているのです。

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