大宮公園小動物園

アナホリフクロウの面白い生態


 佐々木飼育係

2021年10月31日

今年、当園で初めて繁殖したアナホリフクロウ。
3羽のヒナは順調に成長し、今では親と同じサイズになりました。
繁殖期間中、アナホリフクロウの巣に面白い変化が見られたので、紹介したいと思います。

巣
アナホリフクロウの巣

最初に産卵を確認したのは7月末、ふ化を確認したのが8月末のことでした。

 
アナホリフクロウの展示場の隅には巣台があります。(右の写真)

 

巣の右には中が空洞になっているシェルター代わりの木があるのですが、

そこではなく外から丸見えの場所で産卵をしました。

 

巣の左奥にポツンと見える白いものが卵です。

 

メス「ケーナ」は警戒心が強く、巣を確認しに飼育係が近づくとすぐに離れるようで、

抱卵する姿はまったく確認できませんでした。

本当にふ化するのかどうか、半信半疑のまま日が経っていきます。

そんな飼育係の心配をよそに、ケーナはしっかり抱卵していたようで、産卵から約1か月でヒナの姿が確認できました。

ヒナがふ化してからもケーナの反応はかわらず、飼育係が近づくとその場を離れたため、ヒナは丸見えの状態でした。
ところが、そこから日が経つにつれだんだんと巣の様子がかわっていき、砂で埋もれていたシェルターがハッキリ見えるようになりました。

ヒナ
ふ化も同じ場所でした
シェルター
左の写真から5日後。木のシェルターが見えるようになりました
シェルター内のヒナ
シェルターに隠れるヒナたち

それまでは丸見えのところにいたヒナたちでしたが、

しっかりシェルター内に隠れるようになりました。

さらに数日後、今度は巣の左奥の土が左手前に寄せられていました。
寄せられて高くなったおかげで、ヒナたちはここから巣の外の世界を覗き見ることができるようになってきました。

巣の変化
左奥が低くなり、左手前が高くなっています
ヒナ、チラ見
巣の外をうかがうヒナ

そして、ヒナは生後約1か月で巣から離れ、地中に設置されているトンネルが新しい隠れ場所になりました。

 

メスとヒナ
奥がメスのケーナ。手前がヒナ

このように産卵・育雛中、巣には変化がありました。

 

母親のケーナがヒナの成長段階に応じて、巣を掘り、レイアウトを変えていたようです。

 

アナホリフクロウの繁殖を通して「飼育してみて分かること」を改めて感じました。

それは、『アナホリフクロウが穴を掘る』ということです。

 

アナホリって名前に付いているんだから、そりゃ穴掘るでしょ。って思いますよね。

ところが、アナホリフクロウについて調べると、
「野生ではプレーリードッグなど他の動物が作った巣穴を利用することが多く、自分で穴を掘ることは少ない。」
と紹介されています。

 

動物園の動物は分かっていることよりも分かっていないことが多いです。

飼育の面白さと難しさがこのようなところで感じられます。

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