「メェ~」のリアル
田村飼育係
2021年12月31日
いよいよ2021年も今日で最後。
皆さんはどんな年だったでしょうか?
今年も振り返るといろいろありましたが、その中でも最近ふと気になったことがひとつ。
ヤギの展示場にいると時折「メェェェェ、メェェェェ…」と、明らかに当園で飼育しているヤギとは違うヤギの声が聞こえてきます。
それは1日に何回も聞くこともあり、毎回鳴き声が違います。
飼育していないヤギの声が聞こえるってどういうこと?と思いますよね。
その謎の声の正体は、来園者です。
来園者がヤギの展示場の前でヤギの鳴きまねをすることがよくあります。それはほかの動物に比べてとても頻度が高く、また、皆さん非常にリアルな鳴きまねをします。子どもから大人までがリアルな鳴きまねができるくらいヤギは馴染みのある動物なのだと改めて感じます。
来園者がヤギの鳴きまねをするというのは最近に限らず以前からよくあることだったのですが、今まであまり気にしていませんでした。しかし、最近ヤギの展示場の前で「メェェェェ、メェェェェ」と大きな声で鳴きまねをしている家族連れのお父さんを見て、ふと鳴きまねをする人が多いことに改めて気づきました。よくよく考えると大きな声でヤギの鳴きまねをするというのは少し恥ずかしい気がしますが、ここまで多くの人がリアルな鳴きまねをするのはなぜだろうと不思議になってしまい、意識を向けるようになりました。
「ヤギはメェ~と鳴くんだよ」と、子どもに教えるために鳴きまねをしている人もいましたが、大体の方が「メェ~」と真似したら「メェ~」と返してくれるか、声に反応してこちらを向いてくれるかなど、リアルな鳴きまねをすることでヤギとコミュニケーションがとれるか試しているようでした。
ヤギが自分たちの鳴き声に近い音や声に反応を示すこともある様ですが、残念ながらほどんどが無反応でした…。
ヤギは「仲間」のヤギと「そうでない」ヤギの声が区別できるらしく、私たちが聞こえる「メェ~」にもヤギたちにはその鳴き声から悲しい、嬉しいなど声に込められている感情を読み取ることができるのだそう。
以外にも「メェ~」の奥は深い!
また、人に対しても要求によって鳴き声が違い、餌が欲しい時はこちらを見ながら「メェェ!メェェ!」と大きな声で強めに鳴いたり、人を呼ぶときは「メヘェェェェ~」と細かく鳴いたり、甘えたいときはおでこを押し付けてきて「ンメェェ~」や「ンンンン~」と小さく鳴いたりします。
ヤギは鳴き声以外にもコミュニケーション方法があり、ヤギ同士で額や角をコンコンと突き合わせたり、互いに顔をペロペロ舐め合ったりして挨拶をします。
この挨拶は人に慣れればしてくることもあり、よくメスのジジがしてくれます。ジジは私が掃除をしていると毎日のように額を体に押し付けてきて、時折ペロペロ舐めて挨拶をしてくれます。さすがに私はペロペロし返すことができないので頬をなでて挨拶に応えています。
また、家畜化されたヤギは「メェ~」と鳴かずとも、自分で解決できない問題に直面した時や要求がある時など、人の目を見つめることで何かしらの手助けをしてもらえると理解しアイコンタクトを習得することが分かっており、当園のヤギたちも助けを求めるときや、餌が欲しい時などにアイコンタクトをしてくることがあります。
それだけでなく、ヤギは人の表情を読み取ることができると言われており、笑顔の人、幸せそうな表情の人を好む傾向があるそうです。また、笑っているか怒っているかなど、人の表情を読み取り人の表情に基づいて行動を決定している可能性があると示唆されています。
ヤギのコミュニケーションスキル恐るべし。
多くの人に親しまれているヤギですが、このようにコミュニケーション方法は「メェ~」以外にも様々あり、知能も高いためリアルに鳴きまねをしてもヤギたちにはバレているのかもしれません。
ただ、笑顔の人を好む傾向があるということなので笑顔で声を掛けたら寄ってきてくれるかもしれませんよ。