大宮公園小動物園

三種の歴史と未来に繋がったこと③

山本飼育係

2022年3月31日

3回にわたってお伝えしたガンのお話しは今回で最後となります。

トリを飾るのはインドガンです。

 

インドガンはモンゴル、中国北西部、チベットや中央アジアの高地に生息しています。

当園ではフライングケージで4羽飼育していますが、

現在は鳥インフルエンザ感染防止のため、一時的にツル舎へ移動しています。

 

ある日、インドガンを見た方から「アヒルみたい」という言葉が聞こえてきました。

確かに顔や体型、足の色が黄色い所などは、どことなくアヒルを思わせる外見です。

でも、アヒルは野生のマガモを品種改良した家禽なので、インドガンとは全く別の種類です。

展示をしても、見たままの印象だけで動物を間違えられてしまうことがあります。

 

そんなアヒルに間違えられやすいインドガンですが、実はすごい鳥なんです!

インドガンは冬になると繁殖地のモンゴルやチベットから越冬地のインドへ渡ります。

その際、なんとおよそ8,000mもあるヒマラヤ山脈を越えて移動する、世界で最も高い所を飛行する鳥といわれています!

それも、約8時間という早さで「ヒマラヤ越え」をします。

このような事ができるのは、発達した飛翔筋と、薄い空気の中でも効率よく酸素を取り入れることができる肺と気嚢があるからです。

また、過呼吸の耐性もあるので、過度に呼吸しても人間のように目まいをおこしたり、気を失ったりはしません。

特別な呼吸器系と筋力が「ヒマラヤ越え」を可能にしています。

インドガンはヒマラヤ山脈がもっと低かった数千万年前から、同じコースを渡っていたといわれています。

それで、今でも祖先の記憶に導かれて、遠回りせず、過酷な旅を続けているのです。

ヒマラヤ越えを可能にする翼

 

動物園のインドガンは餌を食べたり、水浴びをしたりする姿が観察できます。

残念ながら飛んでいる姿を見ることはできませんが、インドガンがすごい能力を持っているということを踏まえ、ぜひ注目してください。

ツル舎に移動したインドガンたち

 

3種類のガンを紹介しましたが、それぞれ人との関わりや歴史があります。

好きな動物や珍しい動物を見ることは、もちろん、動物園の楽しみ方の1つです。

でもそれと同時に、学び、知ることができる場所でもあります。

実際に見て、今まで知らなかったことに気づけたこと、覚えたこと、たくさんの発見があるはずです。

3つの話しを通して、鳥たちの歴史や人と動物の関係について、興味を持ってもらえるきっかけになればいいなと思います。

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