大宮公園小動物園

「きっかけ」が大切というお話

小高飼育係

2022年4月30日

 イギリスの絵本作家、スーザン・バーレイの「わすれられないおくりもの」というお話をご存じでしょうか?とても賢く、森のみんなから慕われていたアナグマが主人公の絵本です。

主人公のモデル ヨーロッパアナグマ

 アナグマという名前を聞いて、どんな動物を想像しましたか?小獣舎の同じ並びにいるアカハナグマと同様に、名前にクマが付きますがクマの仲間ではありません。クマは食肉目(ネコ目)クマ科ですが、アナグマは食肉目(ネコ目)イタチ科です。アナグマ属は3種いて、ユーラシア大陸にヨーロッパアナグマとアジアアナグマが分布しています。日本にいるのはニホンアナグマで、日本の固有種です。ただし、北海道には生息していません。秋になると冬に備えて脂肪をため込むため、かなりずんぐりした体形になります。そのため、大きさがかなり小さいにもかかわらず、ツキノワグマと間違えられることがあるようです。しかし、胴の長さに比べて脚が短いので、走る姿はイタチです。

ずんぐりむっくり ニホンアナグマ

 アナグマは体のサイズや色、生息環境などが似ていることかとから、よくタヌキとも間違えられます。穴を掘って巣を作り生活していて、巣穴は地下で複雑につながっています。出入り口は複数あり、同じ巣穴を異なる動物、タヌキやハクビシンが使うこともあり混同されたのでしょう。また、複数のアナグマが同じ巣穴を使うことがあり、「同じ穴のむじな」などという言葉が生まれたものと思います。指は前後共に5本で、前肢の爪はとても長く穴を掘るためにとても役立っています。

目の周りの黒い模様はたて
前肢の長い爪は道具であり武器にも

 寒さの厳しい地方では、冬から春にかけて巣穴で冬ごもりをします。ここにいる2頭は、メスのあんみつが秩父生まれ、オスのいのすけが寄居生まれなので本来だったら冬ごもりをしたはずです。今は動物園で生活しているので、真冬でも生活は変わりません。

 昼間、展示場で寝ていることが多いのは夜行性だからです。視力は良くありませんが、臭覚や聴覚が優れているので、暗くても問題なく獲物を捕ることができます。雑食性でミミズや昆虫が好物です。また、果実や植物も食べ栄養を補充します。ため糞をする習性があり、ここの2頭も糞をするところは決まっています。今まで決まった場所以外で糞を見たことはありません。なかなか飼育係思いの動物です。

 アナグマはタヌキやオポッサムと共に「死んだふり」(擬死)をすることで有名です。敵に襲われた時、急に動かなくなると襲った方が力を緩める傾向があり、そのすきに逃げるという「捕食回避」の行動だといわれています。警戒心があまり強くないアナグマが、強烈な恐怖心を感じたとき、体が硬直して倒れてしまうのではないでしょうか?擬死の時の姿勢は大変不自然なので見分けがつくといわれています。見たことが無いのでできるかどうかわかりませんが、ここではそんなことが起きないように暮らしてもらいたいと思います。

 アナグマの女の子、フランシスを主人公にしたシリーズも好きな絵本でした。動物の事を学ぶようになってわかりましたが、こちらはアメリカの作家の作品なので、主人公はアナグマ属のアナグマではなく、アメリカアナグマ属のアメリカアナグマのようです。

アメリカアナグマ フランシスはこちらの種

 小さいころに親しんだ絵本が、今の仕事に役立っている。と思うと、学ぶ「きっかけ」はどこにでもあるのだなと、しみじみ感じます。

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