休園日のお仕事
天野獣医
2022年8月31日
夏の暑さも盛りを過ぎて、35℃を超えるようなことはなくなってきました。このまま暑さがぶり返すことなく秋を迎えられると良いのですが。
さて今日は休園日のお話です。日本全国津々浦々、たくさんの動物園がありますが、年中無休で開園している動物園はそう多くはありません。多くの動物園は週に一回曜日を決めて休園日として動物園をお休みにしています。という話をすると、休園日には飼育係もお休みだと思われることがよくあります。いえいえ、そんなことはありません。当園は月曜日が休園日ですが、何曜日だろうとお盆だろうとお正月だろうと生きた動物がいる限り、飼育係は交代でどんな日にも出勤します。
そんな来園者がいない休園日には開園日にはできないお仕事があります。たくさんの動物に予防注射を打つとか、別の獣舎にお引越しさせるとか、動物の展示場を修理やリニューアルするとか、やることは山のようにあるのです。むしろ考えようによっては飼育係にとっては休園日こそ積極的に出勤してここぞとばかり懸案事項を解決する日でもあります。
と、前置きが長くなりましたが、今日はそんな休園日のお仕事の一つ、クマ池の清掃をご紹介します。ツキノワグマのヨリーが暮らしているクマ舎の運動場には池があります。ご覧になったことがある方も多いかと思いますが、暑い日にはヨリーはこの池に入って涼んでいます。ただクマ舎の上にはムクノキや松があり、落ち葉が絶えず落ちてきますしヨリーの抜け毛などもたくさん池に入っています。そうすると池の底にこういったゴミや泥などが溜まってくるので時々水を抜いて清掃しなければいけません。水抜きは結構時間がかかるため頻繁にはできませんので普段から池の底に沈んでいる落ち葉などを網ですくってはいますが、全部は取りきれないので、休園日を利用して水を抜きます。
クマ池はお風呂みたいに底に栓があるような構造にはなっていません。上の方のパイプからオーバーフローで排水する仕組みになっています。そのため水を抜くにはポンプを使って水を汲み出すしかありません。排水するだけで1時間以上かかるのですが、その後も大変!池の底に生えた苔をデッキブラシで擦って落とすのですが、凸凹があるのでやってもやっても綺麗にならず無限地獄に心が折れそうになります。そして翌日の筋肉痛は必至です。私くらい年取ってくると明後日に来ますが。
そうしてまた水をためますが、これにもまた1時間くらいかかります。ですから最初から最後までやると一日仕事になります。もちろんやり始めたら途中ではやめられないのでヨリーには一日寝室で過ごしてもらうことになってしまいます。でも翌日は綺麗になった池で遊べるからね、と言い聞かせます。
ここで一点、当園によく来てくださっている方々は気になっているかもしれません。クマ池の金魚について。クマ池には2匹の金魚が暮らしています。よく「あれクマの餌だよ」「ツキノワグマって金魚食べるんだ~」という声が来園者から聞かれますが、食べません(基本的には)。
あの金魚たちはカピバラ池で生まれ育った生粋の動物園産の健康優良金魚で、ボウフラ対策のためクマ池とハイエナ池に放してあります。池の水を抜いている間はバケツに避難していてもらいました。この金魚たちの活躍のおかげか、この夏は猛獣舎で作業していても一度も蚊に刺されることなく過ごせたのでした。クマの餌じゃありませんよ!大切な金魚です!