アナグマの穴
いつまでたっても動物たちには驚かされる小高
2022年12月15日
アナグマは名前の通り地面に穴を掘って地中でくらしています。
動物園は生きている動物を展示する施設なので、展示場の中が土で覆われ穴が開いていて「アナグマはこの中にいます」では、その役目を果たせません。そこで、コンクリートの床の展示場に木の枝や落ち葉を使って地面の代わりを作っています。また、休息する場所も巣穴のように細長い木箱を用意しました。箱の中に入ってしまっても中が見えるように、一面はアクリル張りになっています。基本的には夜行性の動物なので、今の季節の開園時間中は、落ち葉を敷いた小さい箱の中で寝ていることが多いでしょう。
ここからが、今回のお話です。
動物園では、夜間、動物たちを建物の中の寝室と呼ばれる部屋に収容することが多くあります。アナグマたちもそうです。寝室には、60×70×45cmの寝箱が用意してあります。寒くなると床材として落葉を入れることがこれまでの定番でした。ところが、今年の秋は急に気温が下がったので落葉のストックが間に合わず、とりあえずあるものでと、アニュアルライグラスの乾草を使ってみました。これは他の動物の床材として使っているものなので驚くべきことではありません。落葉に比べると硬くてゴワゴワしているので寝床を作りにくそうというのが第一印象でした。上に乗るとどれくらいつぶれるのかわからなかったので、寝箱いっぱいになるほど乾草を押し込みました。そして翌日、驚くことが起きていました。こんな小さな寝箱なのに見事に巣穴が掘られています!
体のサイズぴったりな穴が入り口から突き当りまで掘られ、しっかり周りは固められ、一番奥がわずかに広くなっていました。(もちろん手をつっこんでみましたとも!)それ以外の場所の乾草は、用意した時のようにガサガサしたままでした。こうやって地面に穴を掘り、生活する空間を作るんだということが、すごくよく分かった瞬間でした。
落葉を使うと毎日半分ぐらいがかき出されているので、それを入れ戻すのが毎日の作業ですが、今回はそれもありませんでした。残念なことにこの巣穴は数日で消失してしまいました。乾草がさらに乾燥したことと、アナグマ自身の動きで乾草が細かくなってしまったことが原因のようでした。
落葉が集まってきたので、一度は落葉に変えたのですが、落葉では半分が毎日かき出されてしまいます。同じ手間ならば、数日に一度の「アニュアルライグラス全とっかえ」のほうが、アナグマにとっても掃除をする私にとっても良さそうなので、この冬は巣穴作りに精を出すアナグマになってもらおうと思っています。
ちなみに、ここまでのお話の主人公はメスのあんみつです。飼育下で生まれ育っていても、こんなことがちゃんとできちゃうって、本能はすごいですね。
では、オスのいのすけはというと…。
ご覧の通り、乾草をきれいに敷いて寝ています。