フクロウたちの羽根の秘密
天野獣医
2022年6月15日
今年の1月のブログで、園内でオオコノハズクという小型のフクロウの羽根を拾ったお話を書きました。#2830
半年も経ってからその続編というのもちょっと時差がありすぎるのですが、前回書こうと思ったら長文になってしまいそうだったので諦めた内容をやっぱり書くことにしました。
私は小学生のころからのバードウオッチャーです。子供のころから自然の中で鳥や虫や動物とたくさん出会ってきました。そんな中で何度もいろいろな種類のフクロウ類にも出会い、また時には羽根を拾うこともありました。
小学生の時初めて拾ったフクロウの羽根をみてあることに気が付きました。羽根の表面にふわふわの短い毛のようなものがびっしりと生えているのです。学校の宿題をやった記憶は全くないのですが、生き物の図鑑は暗記するほど毎日読んでいたので「これが図鑑で読んだアレか!!」と感動したものです。
皆さんは何のことだかおわかりでしょうか? フクロウ類は獲物であるネズミなどの小動物に気付かれることなく暗闇で背後や上空から襲いかかります。なんとフクロウ類は羽音がしないのです。同じ猛禽類であるタカやワシははばたくときにバサバサと羽音がしますね。ところがフクロウ類ははばたいても全くの無音です。これによって獲物はフクロウの接近に全く気付かず捕まってしまうのです。そんなフクロウ類の風切り羽には表面に細かい毛が生えていて、一枚一枚の羽根どうしがこすれて出る摩擦音を消すことができるのです。フクロウ類とタカ類の羽根は似ていますが、表面をよく見て細かい毛が生えていればフクロウ類の羽根、と判別することも可能です。
1月に拾ったオオコノハズクの翼の写真をよく見ると、初列風切という一番前にある羽根の前縁(赤矢印)に櫛の歯のようなトゲトゲした部分があり、最新の研究ではこのトゲトゲもフクロウが飛ぶ時の消音効果に役に立っているのだそうです。他にもフクロウの羽根そのものが柔らかいことなども羽音がしないことに関係しているそうです。
ほとんどのフクロウ類はこの仕組みを持っていて羽音がしませんが、なんと、北海道に生息する絶滅危惧種のシマフクロウは羽音を立てて飛びます。それは、彼らの主食が魚だからです。魚は水の外の音はあまり聞こえないので羽音を消す必要がなかったからと考えられています。とても面白いですね。
余談ですが、フクロウの研究をしている知人が、調査のため木に登ってフクロウが使用している巣箱を調べようとしたところ、背後から突然フクロウに頭を蹴られて流血したそうです。昼間だったのですが、全く羽音がせずフクロウの接近に気が付かなかったそうですが、
心配して駆けつけた仲間に「フクロウに蹴られちゃった~♪」と血まみれになりながらニコニコして自慢していたとか…。