ハダカデバネズミの現状報告
ecoハウチュー(齊藤(友)飼育係♀)
2020年9月3日
今年は動物にも人にも厳しい夏になり、気が抜けない日々が続いていますね。6月に再開園した後もしばらく閉館していた新小動物舎「ecoハウチュー」ですが、7月から昼行性エリアのみですが展示を再開することができました。動物たちの健康管理のために空調設備を駆使していますが秋が待ち遠しいです。
さて、「ecoハウチュー」再開館と同時に展示再開予定だったハダカデバネズミは、出産のタイミングに重なってしまったため、落ち着いて子育てが出来るように展示をお休みしています。そこで、ハダカデバネズミの生態を紹介しつつ子育ての様子について報告したいと思います。
ハダカデバネズミは生活している地下の環境にあわせて体毛が少なく(裸に見えますが「感覚毛」という細い毛があります)、穴を掘るための大きな歯を持っています。彼らはそのインパクトの強い姿だけではなく、哺乳類では珍しくハチやアリのように群れの中に“女王”がいます。特定のオス“繁殖オス”と女王との間にのみこどもがうまれ、その他に子育てをサポートし穴掘りをする“ワーカー”や群れを敵から守る“兵隊”といった1つの群れの中で役割分担をしてくらしています。また、齧歯類で体長が10cmほどですが、約30年生きることができます。(ちなみに、ハムスターの平均寿命は2、3年です)
現在もハダカデバネズミの社会性と長寿について研究が行われており、女王が妊娠している時の糞をワーカーが食べることで出産後こども泣き声に反応し、子育てをするようになることや、ある程度の年齢になると加齢による死亡率が上昇しなくなることなどが分かっています。一方で、役割分担し協力して生活をしているはずなのに巣材を運んでいる仲間の尻尾を引っ張り邪魔する行動をする個体がいることがわかっていたりと不思議な生き物です。
こども動物自然公園では、4月と7月に同じ群れで、続けて繁殖しました。写真の中央に写っているのが出産直後の女王です。
そして、生後約2週間の時に撮った写真です。
こどもの大きさは3cmくらいしかありませんが、この頃には巣の中を動き回る姿が見られました。
生後3週間ほどになると、こどもたちが自力で餌を食べるようになりました。下の写真ではこどもたちのお腹が餌を食べて大きくなっているのがわかります。
ハダカデバネズミは生まれてすぐはワーカーとして群れで活動します。そこから兵隊になる個体もいれば、世代交代が起き、繁殖オスや女王になる個体もいます。今回繁殖したこどもたちは今は、大人と一緒に巣材を運んでいます。これからの成長も楽しみです。近日中にハダカデバネズミの昼行性エリアの展示の再開を考えていますので、来園された際には観察してみてください。