動物園の研究活動
茅野飼育係
2021年12月26日
クリスマスも過ぎ、体の芯から冷える冬らしい寒さになってきましたね。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
私は今年度から企画調整係に配属されました。企画調整係は動物の飼育だけでなく、他園館との動物搬出入の調整、ホームページ・SNSの更新、掲示物の製作、イベントの企画、餌の発注など幅広い業務をおこなっています。その他にも私が担当している中に、「研究活動」の業務があります。動物園で研究?と思われる方もいるかもしれませんが、実は動物園には主に「教育・環境教育」、「レクリエーション」、「種の保存」、「調査・研究」の4つの役割があり、「研究活動」も動物園の重要な役割の1つです。
ではなぜ動物園で研究が必要なのでしょうか。さまざまな理由があると思いますが、1番は動物の知識を増やし、繁殖や保全、動物福祉に役立てるためです。動物のことをより知ることで、繁殖しやすい環境や施設にしたり、動物がより健康で豊かに暮らせる環境を提供したり、動物の生息域外保全に役立てたりと多くのことに活用できます。そのため動物園では行動学、遺伝学、生態学、生理学などさまざまな分野の調査をおこなっています。また動物だけではなく、教育活動に活かすため来園者の意識や行動についての調査も行なうこともあります。
当園では現在行動学や遺伝学などの調査を大学と共同で行なっています。今回は今年度実施したフンボルトペンギン、マヌルネコの行動学の研究について紹介します。フンボルトペンギンのプールには造波装置という波を作る機械があり、基本的に波のあるプールになっています。そこで今回の研究では、そもそも波の有無がペンギンの行動にどのような影響を及ぼすかについて調査していただきました。マヌルネコでは2種の研究を行い、1つ目はマヌルネコの待ち伏せ型の捕食方法を模した採食エンリッチメント(※)の調査、2つ目は嗅覚に優れたマヌルネコの感覚を刺激する嗅覚エンリッチメントの調査をしていただきました。
(※エンリッチメント…飼育動物の“幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策)
行動学の研究ではまず、大学側から何を対象にどういったことを行いたいのかなどを示した研究計画書の提出があり、それを踏まえてどこまで実施可能か園内で話し合います。大まかな内容が決まれば、現場の下見や飼育担当者との細かい打ち合わせを行います。今回のマヌルネコの調査のように何かを提示する研究のときは、飼育係や獣医が安全面を踏まえて判断します。その後訂正された計画書をもとに、実際に調査が始まります。観察はビデオや目視で行い、目視の場合は1日中動物の前にはりつき観察することもあります。観察が終わればデータを解析し統計をかけ、やっと結果がでます。最終的にいただいたデータを園内で共有します。
このように動物園では、表に出る機会は少ないですが研究活動にも力を入れています。動物園の研究活動に少しでも興味をもっていただけましたか?動物園が行っている研究活動を含め様々な取り組みを通して、動物に関する理解を深めるとともに、人と動物の関係についても考えるきっかけになっていただけたらいいなと思います。
今回が2021年最後の更新となりました。みなさんよいお年を!