女王おなか日記
齊藤飼育係
2022年10月23日
みなさんは動物園で妊娠している動物をみつけたことはありますか。おなかの大きな動物をみて、おや?このこもしかして・・赤ちゃんがいるのかな?と気づいてくれる方も多いはず。多くの動物のお母さんは妊娠するとおなかが大きくなりますね。出産にむけ少しずつ大きくなるおなかですが、妊娠後期には赤ちゃんが一気に成長するのでおなかもどーんとふくれて、おっぱいもはってきます。私たち飼育係はこのおなかのふくらみやおっぱいのはりぐあい、お母さんの行動などを観察しながら出産のタイミングをなるべく正確に判断し、準備をしています。
動物種や個体によっては出産までほとんど体型が変わらず外見からは妊娠がわからないものもいます。赤ちゃんが1頭の場合やお母さんがはじめての出産の場合などです。また、コアラやカンガルーなどの有袋類は赤ちゃんがまだとても小さなときに出産するためおなかのふくらみから出産日を推測することは難しくなります。
そんな中で今回、みなさんにどうしても紹介したい“おなか”がございます。それは妊娠しているハダカデバネズミのお母さんのおなかです。ハダカデバネズミは、真社会性をもつ動物でアリやハチのように群れの女王だけが赤ちゃんをうみます。妊娠期間は約70日で、一度に生まれてくる赤ちゃんはだいたい10〜20頭。面白い生態が盛りだくさんのとても不思議で魅力的な動物ですが、ここではあえて、いや、満を持して、女王たちのおなかのふくらみぶりをご紹介したいと思います。当園では現在ハダカデバネズミを5群れ飼育しています。今回はそのうちの3群れの女王たち(ABC)のおなかが登場します。
まずは、出産約30日前の女王Aと女王Bをご覧ください。
ちょっとだけおなかがふくらんできました。私たち飼育係でも交尾の様子はなかなかみることができないので、この段階ではじめて妊娠した!ということがわかります。よろこびの瞬間です。動物種によってはこのくらいのふくらみが MAXで出産する動物もたくさんいるのですが、ハダカデバネズミの女王の場合、このふくらみはまだまだ序の口です。ここから約3週間、だんだんとゆるやかにふくらんでいきます。
続いて、出産5日前の女王Bです。
かなりふくらんできましたね。赤ちゃんは何頭いるのかな〜とうまれてくるのが楽しみになります。出産経験が浅い女王の場合、産仔数が少ない傾向があり、このくらいの大きさでうんでしまう場合もあるので、このあたりからは毎日油断ができません。いつうまれてもおかしくないぞ、と思いながら飼育管理をおこないます。でも、ベテラン女王はここからまだまだふくらみます。
出産数日前の女王A、女王B、女王Cです。
まだかなまだかな、と毎日ソワソワしますが、なかなかうまれないのでだんだん不安になってきます。もうおなかはパンパンですし、トンネルも通りづらくなってきました。というか、詰まってしまいそうです。安静にしていてほしいのですが、女王たちは大きなおなかに屈することなく巣の中を動き回り、群れのメンバーたちの指揮をとります。赤ちゃんには少しでも長く安全なおなかの中ですごして大きくなってほしいな、という気持ちと、女王は大丈夫だろうか・・いつでもうんでいいんだよという気持ちのせめぎ合いです。
いよいよ出産日当日の女王Aと女王Bです。
風船になって飛んでいってしまいそうですね。おなかの皮膚が伸びて、なんと赤ちゃんが透けて見えます。おっぱいもはってきて動きもそわそわ。女王Aはこのオイルヒーターの近くのあたたかい場所がお気に入り。女王Bは一度にうむ赤ちゃんの数もおなかのふくらみ方もいまのところ当園のハダカデバネズミでは1番です。今までバックヤードで飼育をしていた群れなので、このブログで久しぶりに日の目を浴びました。(地中暮らしなだけに)
さいごに出産後の女王Cです。
おなかが見事にへこみましたね。ふつうのハダカデバネズミの体系になりました。この写真は出産後約1か月で撮影したので、もしかしたらもうすでに妊娠しているかもしれません。また2か月後に期待しましょう。
いかがでしたか。出産に向けてこんなにわかりやすく、おなかが大きくなっていく動物はなかなかいないので準備をする私たちにとってはとてもありがたいことですが・・・3か月に一度この過程を繰り返すハダカデバネズミの女王のパワーにはほんとうに驚嘆です。そして、同じハダカデバネズミでも三者三様の妊娠過程、とっても愛おしいです。
現在ecoハウチューでは、3群れのハダカデバネズミたちを展示しています。今回登場しなかった女王も観察することができるので、女王たちのおなかが気になった方はぜひecoハウチューに会いにきてくださいね。
お問合せ先
〒355-0065
東松山市岩殿554
こども動物自然公園管理事務所
電話:0493-35-1234
FAX:0493-35-0248