鳥たちのユニークな恋のアプローチ
堀田飼育係
2023年5月12日
皆さんは、思いを寄せるお相手にどんな恋のアプローチをしますか?
お相手の脇腹をパタパタと叩いてみたり、大好きな食べ物を口移しでプレゼントしたり、熱烈なダンスをしたり、クチバシをタカタカと鳴らしてみたり、目玉柄の大きな羽を広げてみたり…しますよね。
冗談です。これは私の担当するエリアで見られる鳥類の求愛行動のごく一部です。
今回は「鳥たちのユニークな恋のアプローチ」をご紹介します!
まずは私がメインで担当する"こうのいけ"のコウノトリです。ニホンコウノトリの繁殖期は2〜7月です。現在はオスが1羽で暮らしていますが、やはり今の時期は恋モードに入っています。
恋モードとなったオスは喉元の赤い部分を膨らませ、カタカタとクチバシを打ち鳴らします。この行動にはクラッタリングという名前が付いています。
毎日お世話をしている私から見れば、「今日もお元気そうで何よりです!」と感じますが、たまにお世話をする飼育係には少し迫力が強いようです。強さもまたオスの魅力ということでしょう。
次にご紹介するのは同じく"こうのいけ"で暮らす、タンチョウです。タンチョウの繁殖期は3〜10月です。現在ペアで仲良く暮らしています。
タンチョウの求愛行動といえばオスが見せるダンスです!当園のタンチョウも今の時期は頻繁に華麗なダンスを見せてくれます。ダンスが盛り上がった日には小枝を高々と放り投げながら、羽を広げ何度も跳ね上がります。一般にはメスがそれに応えるように跳ねるとカップル成立とのことですが、当園のメスはクールな性格のようで一瞥もくれずなんてことも日常です。なんとも温度差のあるカップルですが、仲はとても良いです。
次にご紹介するのはお隣のサイチョウたちです。
サイチョウの仲間は恋のアプローチとして求愛給餌という行動をとります。オスがメスに食べ物を渡し、メスがそれを受け取るとカップル成立となります。逆に受け取ってもらえないと…そういうことです。
ミナミジサイチョウのお世話をしていると、面白い行動が見られます。私が与えた餌をジサイチョウからドウゾと差し出されることがあるのです。私も一度は受け取りますが、私は食べられないからドウゾともう一度渡すと、不思議そうに食べるのです。私は求愛給餌をされているのでしょうか?なかなか興味深い行動です。
さいごはフンボルトペンギンです。
日本でのフンボルトペンギンの繁殖期は10〜6月です。フンボルトペンギンは求愛時、オスがメスの身体を翼(フリッパー)でペシペシと叩きます。たまにケンカ⁉︎と尋ねられますが、ケンカのときはバシッ!と叩きます。
ボェーっと鳴くのも求愛行動のひとつですね。愛が深まっていくとお互いを羽繕いしたり、寄り添って休む様子が見られるようになります。
当園にはペンペンという人工哺育で育ったオスの個体がいますが、12歳となった今も特定のペアを持っていません。そのせいか、飼育係に求愛をする様子がよくみられます。先程ご紹介したペシペシのほか、駆け寄る、後をつける⁉︎、足の間に入る、腕に座る、長靴の上に立つ⁉︎、そして最後は穴を掘り手作りしたお家へご招待いただくなど様々なアプローチを仕掛けてくれます。(ペンペンがどんなに一生懸命掘ってくれても私が入れるサイズの巣穴にするには無理がありそうですが。)
ペンギンを担当するのは初めてだったので、ペンペンからの可愛らしくも少々強引なアプローチに戸惑い、日々作業中断を余儀なくされた半年でしたが、そろそろその繁殖期も終わりを迎えます。少々寂しくもなりますが、来期こそはペンペンもペンギンのメスに恋ゴコロを燃やしてくれることを願っています。
いかがでしたか。
動物園では年間を通してご観察いただくことで、様々な行動の変化をご覧いただけます。まもなくオープンから1周年を迎える"こうのいけ"をはじめ、多くの鳥類の恋のアプローチはユニークなものに溢れています。その行動からは私たちも愛を感じられるものと思います。カップル成立の後にはタマゴを抱く、ヒナが育つといった新たな愛のかたちに移行します。温かく見守っていただけたらと思います。
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