埼玉県こども動物自然公園

ミルカー(搾乳機)の歴史

2023年10月25日

朝夕の気温差が激しく、ヒトも動物も体調管理に苦労している今日この頃です。日中は暖かいので動物園日和の日が続いていますよ。来園の際は脱ぎ着しやすい服装がオススメです。

 今回は乳搾りの機械の歴史についてです。
 紀元前3000年頃の古い彫刻にウシの乳搾りをしている様子が描かれています。牛乳の量は今のウシほど多くはなかったはずですが、それでも手で搾るのは大変だったようです。
 その後、重力に頼った搾乳機が発明されましたが、効率が悪く採用されませんでした。次に発明されたのは圧力を用いたもので、乳頭(おっぱい)をローラーのようなものでしごく方式でした。しかし、手搾りより遅く普及しませんでした。

 この次に考え出されたのが、現在のミルカーに通ずる真空を利用して牛乳を吸引する方法です。1851年にイギリスで考案され、1892年にはスコットランドでライナー(吸い口)の基本形が発明されました。しかし、最初のものは吸引し続けるものでした。仔牛の授乳と違い、常に吸い続けるため、乳房炎(ウシのおっぱいの炎症)が増え、普及しませんでした。そして1895年、ついにイギリスで真空を拍動させるシステム(パルセンター)が開発されました。それまでただ吸うだけだったものが、仔牛が吸った時や、手で絞った時のようなリズムで吸ったり止めたりを繰り返せるようになったのです。その後もいろいろな部分が改良され、1922年のイギリスで現在の技術、システムに匹敵するミルカーが完成しました。1940年代にはウシが牛乳を出しやすくなる刺激(仔牛がおっぱいを飲むときの刺激)とミルカーでの刺激の関係も研究され、1950年代以降ついに現在とほぼ同じ機能のミルカーが販売されるようになりました。

 一方日本では、牛乳や乳製品を庶民が食べられるようになったのは明治・大正時代からでした。このころは、ウシは一戸で1~2頭しか飼われておらず手で絞っていました。その後、昭和28年(1953年)に政府が酪農を促進するために「有畜農家創設特別措置法」を制定し、海外から積極的にウシ(乳牛)を輸入したのをきっかけに日本の現代酪農は発展していきます。昭和35年(1960年)以降になると酪農の専業化・規模拡大が進み国内でもミルカーが普及していきました。それまで腱鞘炎になりそうなくらい大変な思いをして手で牛乳を搾っていた人たちが初めてミルカーを使ったときはとても驚いたようです。

 私も現在、乳牛コーナーでミルカーを使ってウシの乳搾りをしています。手で搾ると1頭20~30分以上かかってしまいそうですが、ミルカーがあれば5分くらいで終わります。日々のお仕事になくてはならない存在です。

ミルカー使用の様子
ミルカ―のおかげで5分くらいで搾れます

 実際に絞っている様子は乳搾り体験の時間の最初に見ることができます。動物園に遊びに来た時は体験の時間をチェックして見に来てみてください。

乳しぼり体験前の様子
乳しぼり体験の時間の最初に見られます

 牛乳や乳製品は、牛乳を出してくれるウシや絞ってくれる酪農家さん、それに携わる多くの人々のおかげで食べたり飲んだりすることができます。牛乳を飲むとき、チーズやアイスクリーム、ヨーグルトなどを食べるときは、少しだけ思い出して、感謝しながら残さずいただきましょう。

長島飼育係より

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東松山市岩殿554

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