ヤブイヌ ミコトとフクマル
2024年5月4日
皆さんこんにちは、飼育係の内山です!寒暖差がすごいと思っていたらあっという間に夏の気候になりましたね。綺麗に咲き誇っていた桜の木も今は青々として森林浴にはぴったりの眺めです。さて、今回私がお伝えしたい動物はヤブイヌのミコトとフクマルのペアリングについてのお話です。
まずミコトとフクマルについて軽くご紹介します。
ヤブイヌは最も原始的な犬といわれ、茶色い体に短い四肢と尾が黒く、小さな耳が特徴的な見た目をしています。足には水かきがあり、泳ぐのがとっても得意な動物です。埼玉県こども動物自然公園には、現在オスのフクマルとメスのミコトの2頭のヤブイヌがいます。
フクマルは活発的でやんちゃ。ミコトも活発ですが、フクマルよりは落ち着いた性格をしています。2頭とも遊ぶのが大好きで木の棒や餌皿などを持ち運んで池に浮かべたり、破壊したり、追いかけっこしたりと遊びのレパートリーは増えるばかりで遊びのプロといってもいいかもしれません。そんな仲良し2頭のペアリングについてご紹介します。
時をさかのぼり2023年の6月19日。右後肢脱臼から2回の手術とリハビリを乗り越えたミコトはすっかり元気に動き回れるようになり、ついにフクマルをヤブイヌ舎に迎え入れる事ができました!ミコトの隣の部屋にフクマルが移動し、フクマルは新居の匂いチェックと散策が止まりません。ミコトもそわそわ壁越しに匂いチェック。しばらくすると、隣の部屋をお互いチラチラと気にし始め、何かいるぞと鳴いたりしていました。明日には顔合わせできそうなくらい良好な雰囲気!まずは、フェンス扉越しに対面からしてみようかと飼育係同士で話し合いました。
- 翌日、放飼場のフェンス扉越しにいざ対面!!と、いきたかったのですが…フクマルは来たばかりで広い放飼場を前にして、外に出る勇気が出ません!ミコトは外に出るとすぐさまフェンス扉の近くまで行ってフクマルが来るかなと様子を伺いますが、フクマルはシュート前でウロウロしながら小さくか細い声で鳴きます。ミコトがフクマルを呼ぶように鳴くと、顔をちょっと出してへっぴり腰のフクマル。小さな物音でもぴょんと跳ねて驚くくらいには緊張していました。フクマルの勇気が出るように、展示ガラスに目隠しをしたり、お気に入りのかじり木を外に置いたりなどと工夫しながら応援しました。それでも外が怖いようで、外に出られず2週間が経過しました。
やっと外に出る勇気が出たフクマル!おっかなびっくりにシュートから体を出すと草の上をぎこちなく散策して匂いチェック。ミコトの姿を捉えると仲間だ!といった感じで互いに匂いチェックと姿を確認し合うことができました。ここまで長かった…!互いの存在を確認しきった後は朝一に挨拶する仲にまでなり飼育係も一安心です。
広い放飼場にも慣れたフクマル。しかしまだ1つ警戒が解けていないものがありました。それは池です!興味がわいて池の淵までは近づきますが池の水に入ることはありません。池の水の警戒がなくなるように小さいため池を舎内に入れたりすると入ってくれましたが、池はまた違うようで警戒心は薄れません。餌を使って気を引くも、1度も池に入る姿を見ることはできませんでした。
そうして1か月ほど経った、7月31日。ミコトとフクマルをフェンス扉越しに対面する中で攻撃的な様子がなく、むしろ仲良くコミュニケーションして鳴き合う様子を見た私たちはいよいよ2頭を隔てていたフェンス扉を開けて、一緒にしてみることにしました!
飼育係何人かで放飼場の外から見守ります。闘争しないか、仲良くできるかと不安が募る中2頭を見れば、不安はすぐになくなりました。
お互いくるくる匂いチェックをした後、遊び相手と認識したようで、すぐに打ち解けて放飼場内を2頭で楽しそうに駆け回りました。さらに、ミコトが池に入ったことに驚いたように目を向けるフクマル。ミコトが池に入るよう促したりする場面もありましたが、フクマルはまだ入る勇気はでなかったようです。大放飼場をぐるりとミコトが先頭で進み、後を追うフクマル。ミコトが池に入るとフクマルは池を避けてミコトを追います。フクマルは池には入りませんでしたが、同居初日で何事もなく相性抜群の2頭を前にとてもほっとしました。
初めはミコトとフクマルは別の部屋でしたが、放飼場を一緒にする中で関係性が良好なので2頭を同じ部屋に収容するようにもなりました。巣箱を2つ用意したのですが、フクマルの巣箱の方に2頭で寝ていました。1週間後にはミコトに教わったのか、フクマルも池に入るようになりました。フクマルはミコトがいると池に入るのですが、8月19日には1頭だけでも池に入り、お気に入りの木の枝をよく水に沈めるくらいには馴れてくれました。
その後、フクマルとミコトの仲はさらに深まり、9月頃から鳴き合いが頻繁に見られ、12月にはパンパスという植物の下に2頭で穴を何か所も掘る姿も確認できました。巣箱の中でマズル(※)を甘噛みする、舐め合う、お互いのお尻の匂いをよく嗅ぐといった行動も目立つようにもなりました。野生下のヤブイヌは10~3月頃が繁殖期といわれています。こういった行動は発情兆候の表れで、もしかしたら近々交尾するかもしれない、と2頭の様子を観察していました。
(※マズル…口のまわりから鼻先にかけての部分)
令和6年1月11日。ついにその日がやってきました。朝から妙にミコトにしつこくかまう様子があったフクマル。鳴き合いもこの日はかなり多かったです。夕方収容後の採食中にフクマルは動きました。フクマルは半分ほど餌を食べ終えると餌からミコトに興味が移り、食べている最中にも関わらずミコトの上に乗ろうと追いかけます。ミコトはお肉が取られると思ったようでフクマルを振り切ってお肉をむしゃむしゃ。お肉を食べているミコトが動きを止めるとフクマルはお構いなしに上に乗ってマウントし、腰を振ります。しかし、まったく陰部は挿入されておらず空気を切るだけでした。
この日から4日間。なぜか採食の時間に限ってマウントがありましたが、どれも交尾には至りませんでした。ミコトは怒ることもなく許容していましたが、それ以上先には進みませんでした。3月、4月にもマウントなのかな?といった動きはありましたが今現在に至るまで交尾は確認できていません。ですが、仲が悪くなることもなく2頭は仲良しのまま日々を楽しんで生活しています!
簡単ですが、フクマルが来てから今現在までをざっとご紹介しましたがいかがでしたか。今後とも2頭のペースにゆっくり合わせながら暖かく見守っていきたいです。ご来園の際は仲良し2頭にぜひ会ってみてください!
内山飼育係より
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